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ハコガメを飼ってみたいと思ったとき、最初の分かれ道が「どの種類にするか」です。ひとくちにハコガメといっても、水辺を好む種類から森の落ち葉の中で暮らす種類までいて、必要な環境がかなり違います。
種類選びを間違えると、あとから設備を作り直すことになったり、その種類に合わない環境で調子を崩したりしがちです。逆に、自分が用意できる環境に合った種類を選べば、飼育はぐっと安定します。
この記事では、ハコガメの仲間を環境タイプで整理し、流通の多い主要種の特徴、初心者に向く種類、購入時に必ず確認したい法規制まで、飼育・繁殖の経験を交えてまとめます。
結論
先に要点をまとめると、種類選びで最初に確認すべきは「温度と越冬」です。当ブログの主役でもある北米のアメリカハコガメ属(トウブ・ミツユビなど)は温帯の出身で、ベビー〜ヤングは室内の加温飼育で育て、繁殖を狙うアダルトでは冬眠(クーリング)も選択肢に入ります。いっぽうマレーハコガメなどアジアの熱帯系は寒さに耐えられないため冬眠はできず、冬も水ごと保温する通年加温が大前提になります。
そのうえで、日々の世話のイメージは環境タイプで決まります。湿度のある陸場+浅い水入れの森林系がアメリカハコガメ属やセマルハコガメ(ただしフロリダハコガメは属内では水に入る傾向が強め)、水場主役のアクアテラリウム的な水辺系がマレーハコガメです。
初心者には、流通が安定していて情報が多い種類のCB個体(飼育下で繁殖された個体)をおすすめします。そして購入前には、種類ごとの法規制の確認を忘れないでください(記事後半で解説します)。
ハコガメとは|「箱」になれるカメ
ハコガメの最大の特徴は、腹甲(おなか側の甲羅)に蝶番(ちょうつがい)があり、頭と手足をしまったあと甲羅をぴったり閉じて「箱」のようになれることです。この防御スタイルが名前の由来です。
「ハコガメ」と呼ばれるカメは大きく2つのグループに分かれます。北米に分布するアメリカハコガメ属(トウブハコガメ、ミツユビハコガメなど)と、アジアに分布するアジアハコガメの仲間(セマルハコガメ、マレーハコガメなど)です。どちらも「半地上性」で、リクガメほど乾燥した環境でも、ミズガメのような水槽飼育でもない、湿度のある陸場と浅い水場を組み合わせた環境が基本になります。リクガメ・ミズガメと飼い方がどう変わるのかはハコガメとリクガメ・ミズガメの違いで詳しく比較しています。
まず環境タイプで分ける|森林系と水辺系
森林系は、保湿性のある床材を敷いた陸場が主役で、全身が浸かれる浅い水入れを置くイメージです。アメリカハコガメ属やセマルハコガメがこちらで、湿度を保つ工夫(床材・霧吹き・通気のバランス)が飼育の中心になります。なお同じアメリカハコガメ属でも、フロリダハコガメは水に入る傾向が強めで、浅めの水場を広めに取ると安定しやすいタイプです。湿度調整の記事で詳しく解説しています。
水辺系は、しっかりした水場を主役にした、アクアテラリウム寄りの飼育です。マレーハコガメが代表で、ハコガメの仲間では例外的に水生傾向が強く、泳ぎも得意なタイプ。泳げる深さの水場と、足のつく浅い休息スペースの両方を用意し、上陸して体を乾かせる乾いた陸場を添えるのが基本です。水換えの手間はありますが、湿度は水場が支えてくれます。
自宅で用意しやすいのはどちらのタイプか──これを先に決めると、種類の候補は自然に絞られます。
主要な種類のミニ図鑑
トウブハコガメ(森林系)
北米東部に分布するアメリカハコガメ属の代表格で、黄色やオレンジの虫食い状の模様は個体差が大きく、模様の美しさで選ぶ楽しみがあります。湿度高めの環境を好み、乾燥に弱い面があるため、森林系の環境づくりがそのまま当てはまります。わが家で飼育・繁殖している種類のひとつです(後述)。詳しくはトウブハコガメの飼い方にまとめています。
ミツユビハコガメ(森林系)
トウブハコガメと同じカロリナハコガメの亜種のひとつで、後ろ足の指が3本のことが多いことからこの名前があります。アメリカハコガメ属の中では丈夫で環境の許容範囲が広いとされ、アメリカ系ハコガメの入門種としてよく名前が挙がります。地味に見えて、頭部が赤やオレンジに染まる個体もいて奥が深い種類です。詳しくはミツユビハコガメの飼い方にまとめています。
フロリダハコガメ(森林系)
同じくカロリナハコガメの亜種で、暗色の甲羅に細かい黄色の放射模様が入る、亜種の中でもとくに華やかとされるタイプです。甲長12〜15cm前後と小柄にまとまります。温暖な地域の出身で寒さに弱いといわれることもありますが、飼育の体感ではトウブやミツユビと大きく変わりません。アメリカハコガメ属の中では水に入る傾向が強めの亜種で、浅めの水場をやや広めに用意すると調子が安定しやすいタイプです。飼育ではベビー〜ヤングは冬眠させず加温で育て、繁殖を狙うアダルトなら冬眠も選択肢に入ります。詳しくはフロリダハコガメの飼い方にまとめています。
ガルフコーストハコガメ(森林系)
同じくカロリナハコガメの亜種で、アメリカハコガメ属では大きめに育つタイプです。体が大きいぶん存在感がありますが、そのぶん広めの飼育スペースが必要になります。多湿を好む傾向はトウブと同様です。詳しくはガルフコーストハコガメの飼い方にまとめています。
メキシコハコガメ(森林系)
メキシコ東部に分布するカロリナハコガメの仲間です。大きめに育つ高さのあるドーム型の甲羅と、模様の少ない黄褐色〜角質色の落ち着いた色合いが特徴で、ミツユビハコガメと同じく後ろ足の指が3本のことが多いタイプです。オスは成熟すると頭部がド派手に色づくのが最大の見どころで、落ち着いた甲羅との対比が魅力です。原産国の輸出規制もあり流通は非常に少なく、国内で見かける機会はまれな愛好家向けの種類です。世話の基本はトウブハコガメに準じた森林系の環境で考えます。
ユカタンハコガメ(森林系)
メキシコ・ユカタン半島に分布するカロリナハコガメの仲間です。高さのあるドーム型の甲羅で、明るめの地色に暗色の模様が入るとされます。オスは成熟すると頭部が白っぽくなるのが特異で、独特の風貌が愛好家に知られています。こちらも流通は非常に少なく、まとまった飼育情報も限られるため経験者向きです。世話の基本は同じく森林系の環境で、多湿の維持を軸に考えます。
この2亜種の詳しい解説はメキシコ・ユカタンハコガメとは|日本ではまず出会えないカロリナハコガメの亜種にまとめています。
ニシキハコガメ(乾燥寄りの森林系)
北米の草原地帯に分布し、アメリカハコガメ属の中ではやや乾燥に強いタイプとされます。ただし「乾燥に強い=乾燥飼育でよい」ではなく、湿度のある隠れ家は必要です。流通量は多くないため、見かけたら状態をよく確認して選びます。詳しくはニシキハコガメの飼い方にまとめています。
セマルハコガメ(森林系)
台湾や中国南部などに分布し、丸みのある甲羅と、物おじしない図太い性格で人気の種類です。湿度のある森林系の環境を好みます。水を嫌う種類でもなく、慣らせば泳ぎも得意です。注意点として、日本の八重山諸島の個体群(ヤエヤマセマルハコガメ)は国指定天然記念物で、捕獲も飼育もできません。流通しているのは海外由来のCB個体などで、購入時は出どころの確認が特に大切な種類です。詳しくはセマルハコガメの飼い方にまとめています。
マレーハコガメ(水辺系)
東南アジアに広く分布し、流通量も比較的多いハコガメです。ハコガメの仲間の中では際立って水生傾向が強く、泳ぎが得意で、水場で過ごす時間が長いのが特徴です。飼育では、泳げる深さの水場と足のつく浅瀬を用意し、上陸して体を乾かせる乾いた陸場を組み合わせた、水ガメに近いアクアテラリウム的なレイアウトが向いています。雑食で餌付きやすい種類です。ただし熱帯産のため冬眠はできません。冬も水中ヒーターなどで水ごと保温する通年加温が前提で、水場主体の飼育は水換えの手間も大きめです。詳しくはマレーハコガメの飼い方にまとめています。
モエギハコガメ(涼しめの森林系)
ベトナムや中国南部など、インドシナ方面の標高の高い森にすむアジア系のハコガメで、萌黄(もえぎ)色がかった明るい甲羅の色彩が名前の由来とされます。高地育ちのため暑さが苦手とされ、日本の夏は保温よりむしろ「涼しく保つ」工夫が必要になる、少し特殊なタイプです。多湿を好む点は森林系と共通ですが、環境の要求がややシビアで神経質な面もあるとされるため、どちらかといえば飼育経験を積んでから検討したい種類です。詳しくはモエギハコガメの飼い方にまとめています。
ヒラセガメ(涼しめの森林系)
インド北東部から中国南部・ベトナムにかけての丘陵地の森にすむアジア系のハコガメで、甲羅のふちがノコギリの刃のようにギザギザしているのが名前の由来です。ハコガメの仲間ですが、蝶番の動きが控えめで甲羅を完全には閉じ切れないとされる、少し変わり者の存在。強い日差しと高温が苦手な「木陰でしっとり」タイプで、モエギハコガメと同じく涼しめ・多湿の環境づくりが基本になるため、こちらも飼育経験を積んでから検討したい種類です。詳しくはヒラセガメの飼い方にまとめています。
初心者に向くのはどれか
「はじめての1匹」という視点なら、次の2つの条件で選ぶのが現実的です。ひとつは流通が安定していて飼育情報が多いこと、もうひとつはCB個体が手に入ることです。この条件でおすすめしやすいのはミツユビハコガメとセマルハコガメです。ミツユビは丈夫で環境の許容範囲が広く、セマルは物おじしない性格で環境に慣れやすいのが強みです。マレーハコガメは餌付きやすい反面、水場主体の飼育で水換えの手間が大きい点はあらかじめ押さえておきたいところです。すでに迎えている方も心配はいりません。扱いやすいサイズの水容器を選び、水換えの曜日や段取りをあらかじめ決めておくと、日々の管理はぐっと続けやすくなります。
トウブハコガメも魅力的な選択肢です。難しさは温度や湿度の管理そのものよりも、エサ食いの悪い個体の立ち上げに苦労する点にあります。逆にいえば、しっかり餌付いていて甲羅に成長線が出ている個体を選べば飼育しやすくなります。環境づくりは湿度と冬の温度の記事を参考にしてください。必要な用品は種類が違っても共通部分が多いので、最初に必要な用品一覧から確認してみてください。
また、ハコガメは数十年単位で生きることもある長寿なカメです。お迎えを決める前に寿命と大きさや飼育費用の目安にも目を通しておくと、長いつき合いのイメージがつかみやすくなります。
購入前に必ず確認したい法規制
ハコガメの仲間は、種類や産地によって扱いのルールが異なります。代表的な注意点は次のとおりです。
- ヤエヤマセマルハコガメ(日本の個体群)は国指定天然記念物で、捕獲・飼育はできません。野外で見つけても持ち帰らないでください。
- ハコガメの多くはワシントン条約(CITES)の対象で、国際取引が規制されています。国内で流通している個体を購入するぶんには問題ありませんが、個人輸入や出どころ不明の個体は避けるのが安全です。
- 規制は変わることがあります。購入前に、その種類の最新の規制状況を販売店に確認し、不明点があれば自治体や環境省の情報を調べてください。
天然記念物・ワシントン条約・登録票など、ハコガメに関わる法律とルールの全体像は飼育の法律とルールまとめで詳しく整理しています。
あわせて、購入時はWC個体(野生採集)よりもCB個体(飼育下繁殖)を選ぶことをおすすめします。環境に慣れていて立ち上げやすく、野生個体群への負荷も避けられます。どこで購入できるか、健康な個体をどう見分けるかはお迎えガイドで詳しく解説しています。
わが家の実例|トウブハコガメ・ミツユビハコガメの飼育と繁殖
わが家ではトウブハコガメとミツユビハコガメを飼育し、繁殖まで行っています。森林系のセオリーどおり、保湿性のある床材と浅い水場を用意し、複数飼育は飼育容器の記事で紹介している浅型容器やコンテナで管理しています。
実際に飼っていて感じるのは、ハコガメは「環境が合えば驚くほど手がかからず、合わないとじわじわ調子を崩す」カメだということです。だからこそ、種類選びの段階で自分の環境と種類のタイプを合わせておくことが、その後の飼育のしやすさをほぼ決めます。繁殖まで視野に入れる場合は繁殖の基礎も参考にしてください。
まとめ
ハコガメの種類選びは、名前や見た目以前に「温度と越冬、そして環境タイプ」で考えるのが出発点です。湿度のある陸場を作れるならミツユビハコガメやトウブハコガメ、セマルハコガメ、水場中心の管理を続けられるならマレーハコガメ(冬眠はできず通年加温)が代表的な候補になります。
そして、どの種類でも共通するのは「国内のCB個体を選ぶ」ことです。種類が決まったら、用品一式まとめとベビー育成環境で、迎える準備を整えていきましょう。
よくある質問
初心者に一番飼いやすいハコガメはどれですか?
丈夫で環境の許容範囲が広いミツユビハコガメと、物おじしない性格で環境に慣れやすいセマルハコガメのCB個体(飼育下繁殖個体)がおすすめです。マレーハコガメは餌付きやすい反面、水場主体の飼育で水換えの手間が大きめです。
ハコガメはリクガメですか?水ガメですか?
どちらとも違う「半地上性」が基本のグループです。種類によって森林寄り(アメリカハコガメ属など)と水辺寄り(マレーハコガメなど)があり、リクガメの乾燥環境ともミズガメの水槽飼育とも異なる、湿度のある陸場+浅い水場という環境づくりが基本になります。
野生のハコガメを拾って飼ってもいいですか?
日本の八重山諸島にすむヤエヤマセマルハコガメは国指定天然記念物で、捕獲・飼育はできません。ハコガメの仲間は種類や産地によって規制が異なるため、飼うときは国内で流通しているCB個体を選び、購入前に最新の規制を確認してください。
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