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保温器具が本格稼働する冬は、ハコガメ飼育の1年の中でもっとも「環境づくりの力」が試される季節です。温度・照明・湿度・電気の安全と気を配る項目は多いものの、一度リズムができてしまえば、冬のお世話は毎日同じことの繰り返しで安定します。
この記事では、室内で加温しながらハコガメに冬を越してもらう場合の日々の管理を、温度・照明・食欲・乾燥対策・安全チェックの順にまとめます。秋の管理・春の管理・夏の暑さ対策とあわせて、季節ごとの管理シリーズとして参考にしてください。
結論
- 当サイトの基本は室内での加温越冬。とくにベビー〜ヤング、迎えて1年目の個体、体調に不安のある個体は冬眠させず加温で冬を越します
- 温度はアダルト〜ヤングでケージ全体24〜28℃+バスキングスポット30℃前後、ベビーはケージ全体30℃キープが目安
- 照明は冬も1日12〜14時間の点灯を保つ。日照が短くなったと感じさせないことが、冬の食欲維持につながる
- 暖房・保温器具で空気が乾くので、乾燥対策は温度管理とセットで考える
- 毎日の温度チェックと、月1回程度の器具点検で「気づいたら止まっていた」を防ぐ
まず前提|冬眠させるか、加温で越冬させるか
ハコガメの冬の過ごし方は大きく「冬眠」と「加温越冬」の2つに分かれます。屋外飼育のアメリカハコガメ属は、気温の低下とともに自然と餌を食べなくなり、土に潜って冬を越します。それ自体は彼らにとって自然な流れですが、冬眠中は体の抵抗力が下がるため、体力のない個体にとってリスクがあることも確かです。
野生のトウブハコガメの越冬は北米の野外研究でよく調べられていて、落ち葉の下の浅い土(平均で深さ4〜5cmほど)に潜り、体温をほぼ0℃近くまで下げて冬を越すことが報告されています(Currylow et al. 2013, The Journal of Wildlife Management など)。さらに実験では、体の水分の半分ほどが凍る状態に数日間耐えた例も報告されているほどで(Costanzo & Claussen 1990)、寒さへの適応はカメの中でも際立っています。ただしこれは、秋のあいだに自然と餌を止めて体を整えた野生個体が、落ち葉と土に守られた場所で少しずつ冷えていくからこそ成り立つもの。加温飼育中の個体が急に寒さにさらされる状況とは条件がまったく違うので、「ハコガメは寒さに強いから平気」とは考えないようにしてください。
そのため当サイトでは、安全を優先した運用として冬眠は繁殖を狙う健康なアダルトに限り、ベビー〜ヤングや迎えて間もない個体、体調に不安のある個体は室内で加温して冬を越すことをおすすめしています。繁殖を狙うアダルトの冬眠の具体的な流れは繁殖を目指すハコガメの冬眠で解説しています。
また、冬眠の話はあくまで北米原産のアメリカハコガメ属に限ったものです。マレーハコガメは熱帯産のため冬眠はできず、水場ごと通年の加温が必須です。モエギハコガメやヒラセガメなどアジア系の種類も、日本の冬は加温して越すのが基本と考えてください。
この記事では、この「室内での加温越冬」の日々の管理を扱います。
温度管理|冬の基準となる数値
加温越冬の温度の目安は、季節を問わず普段と同じです。
- アダルト〜ヤング:ケージ全体24〜28℃+バスキングスポット30℃前後。暖かい側と涼しい側の温度勾配をつくり、カメが自分で居場所を選べるようにします
- ベビー:ケージ全体30℃キープ。わが家ではタートルバスにパネルヒーターを組み合わせて、水場ごと暖かく保つ運用をしています(詳しくはベビーの環境づくりの記事へ)
冬に特有なのは、この数値を「維持する難易度」が上がることです。外気温が下がるほど保温器具の稼働は長くなり、部屋の冷え込みが強い明け方には、日中と同じ設定でも温度が落ちやすくなります。最高・最低温度が記録できる温度計で「一番冷える時間帯に何℃まで下がっているか」を把握しておくと、器具の追加や設定変更の判断がしやすくなります。
保温器具の選び方と組み合わせは保温器具の使い分けの記事と冬の温度管理用品まとめで詳しく解説しています。上部ヒーター(暖突タイプ)を検討している場合はこちらの記事も参考にしてください。足元からじんわり温めるパネルヒーターの貼る位置や使い方のコツはパネルヒーターの記事で詳しく解説しています。
サーモスタットで「上がりすぎ」も防ぐ
冬の保温で意外と見落としやすいのが、暖房の効いた日中に保温器具が効きすぎて温度が上がりすぎるパターンです。保温器具はサーモスタットにつないで自動で制御し、設定温度は温度計の実測値と付き合わせて調整してください。
「少し寒いくらい」をそのままにしないほうがいい理由
加温越冬でいちばん避けたいのは、冬眠に入れるほどの低温でも適温でもない、18〜22℃くらいの中途半端な低温が長く続く状態です。この温度帯では、体は活動を続けてエネルギーを使うのに、消化や体の防御の働きは本調子にならないままになりがちです。
カメの免疫の働きが体温に左右されることは研究でも報告されていて、ミシシッピアカミミガメでは、体温が29℃を下回る条件で抗体をつくる細胞(B細胞)の働きが鈍ったという報告があります(Zimmermanら 2017、Functional Ecology)。また、野生のトウブハコガメが自分で選ぶ体温を調べた研究では、選ばれた体温の中心はおよそ25〜31℃の範囲に集まっていたと報告されています(Parlinら 2017、Conservation Physiology)。飼育下の目安(ケージ全体24〜28℃+バスキングスポット30℃前後)は、ちょうどこの「カメが自分で選ぶ温度帯」に重なっています。
さらに、細菌由来の物質を投与されたトウブハコガメが、条件によってはより暖かい場所を選んで自分の体温を引き上げる「行動性発熱」を示したという報告もあります(do Amaralら 2002、Physiological and Biochemical Zoology)。人間が熱を出して病原体と戦うのと同じことを、カメは「暖かい場所へ移動する」ことで行っていると考えられています。冬の間もバスキングスポットを絶やさないことは、カメが体調を整えたいときに自分で体温を上げられる場所を残しておく、という意味でも大切です。
照明時間|冬こそ「日の長さ」を一定に保つ
ハコガメが秋から冬に食欲を落とす引き金は、温度の低下だけではありません。日が短くなること(日照時間の減少)も、冬支度のスイッチになると考えられています。海外の爬虫類専門獣医師のケアシートでも、室内で越冬させる場合は夏場と同じような温度と、1日12〜14時間程度の明るい時間を保たないと、餌を食べなくなったり調子を崩したりすることがあると紹介されています。
室内飼育では、紫外線ライトやバスキングライトの点灯時間をタイマーで管理し、冬でも点灯時間を短くしないのが基本です。点灯・消灯の時刻を毎日一定にするだけで、カメの生活リズムはかなり安定します。タイマーの選び方と設定例はライトの点灯時間とタイマー管理の記事にまとめています。逆に、消灯後の夜間は光を出さない保温器具にまかせて、しっかり暗くしてあげるのが基本です。「夜もライトは必要?」「夜中に動いているけど大丈夫?」といった疑問は睡眠・夜の過ごし方の記事で詳しく解説しています。
冬の間は屋外での日光浴がほとんどできないぶん、紫外線はライトで確保する時期でもあります。暖かい季節に日光浴をさせるときのやり方や安全対策は日光浴のやり方の記事にまとめているので、春からの再開時に参考にしてみてください。
なお、冬は紫外線ライトの交換時期が来ていないかも確認しておきたいところです。点灯していても紫外線量は使用時間とともに落ちていくため、用品の交換時期の記事を参考に、使用開始からの期間をチェックしてみてください。紫外線が足りない状態が長く続くとカルシウム代謝に影響し、甲羅や骨がもろくなる代謝性骨疾患(MBD)につながることもあるため、ライトの「鮮度」は冬ほど意識しておきたいポイントです。
冬の食欲との付き合い方
温度と照明を保っていても、秋から冬にかけて食欲が少し落ちる個体はいます。長年その季節リズムで生きてきた体ですから、多少のペースダウン自体は珍しいことではありません。大切なのは「様子見でよい食欲の低下」と「対応が必要な食欲不振」を切り分けることです。
- まず温度計を確認:ケージ全体・バスキングスポット・一番冷える時間帯の最低温度が基準を満たしているか。食欲低下の原因でもっとも多いのは、気づかないうちの温度不足です
- 体重を記録する:食べる量が減っても、体重が維持できていて動きに元気があれば、様子を見ながら食べる分だけ与えれば大丈夫なことが多いです。健康チェックの記事の記録方法が役立ちます
- まったく食べない・急に痩せる場合:温度に問題がないのに絶食が続く、目や鼻に症状がある、明らかに体重が落ちている——という場合は病気の可能性も考えます。餌を食べないときの記事と呼吸器症状の記事を確認し、必要に応じて爬虫類を診てもらえる病院に相談してください
ちなみに「寒いと消化が遅くなる」ことは、実際にカメで確かめられています。カメの仲間(アカアシガメの幼体)を30℃と20℃で飼い比べた研究では、食べたものが消化管を通過する時間が30℃では平均で約3.6日だったのに対し、20℃では約5.5日と大きく延びたと報告されています(Mendoza Yengleら 2022年、Journal of Zoo and Aquarium Research)。変温動物のカメは、体温が下がると消化のペースそのものが落ちるため、体が冷えているときに食欲が落ちるのは「消化が追いつかないうちは食べ過ぎない」ための自然な反応ともいえます。だからこそ、食欲が落ちたときにまず温度計を見るのが、遠回りに見えていちばんの近道になります。
もうひとつ知っておきたいのが、爬虫類の体に備わった「概年リズム(体内の一年時計)」の存在です。爬虫類では、温度25℃・明暗12時間ずつという一定の環境で7年間飼い続けても、食欲の季節的な波が衰えずに繰り返されたという研究報告があります(Alexander & Brooks 1999年、Copeia誌。ヘビでの研究)。ハコガメでも、温度と照明をきちんと保っているのに秋冬だけ食が細くなるのは、体の中のカレンダーが「冬」を覚えているためと考えると納得しやすいはずです。温度に問題がなく体重も維持できているなら、無理に食べさせようとせず、体重の記録を物差しに春までゆったり付き合うくらいの構えでちょうどよいと考えています。
乾燥対策|保温とセットで考える
冬の室内は、暖房と保温器具のダブルで空気が乾きます。ハコガメは湿った環境で暮らす種類が多く、乾燥が続くと皮膚や目、呼吸器への負担になるとされているため、冬の乾燥対策は温度管理と同じくらい大切です。脱水が進んだときに出るサイン(目のくぼみ・皮膚のしわなど)と水分補給の工夫は脱水症状の見分け方の記事で詳しくまとめています。
基本は保湿力のある床材をしっかり湿らせておくことと、自分から入れる浅い水入れを常設しておくことです。そのうえで、わが家ではシェルターに湿らせた水苔を入れて、カメが自分から潜って湿度を確保できる場所をつくっています。乾いたら水で戻して繰り返し使えるので、冬の常備アイテムとしておすすめです。
それでも湿度が上がりにくい場合は、霧吹きの回数を増やしたり、部屋用加湿器で部屋ごと底上げしたりする方法もあります。詳しくは湿度調整の記事と加湿グッズの記事を参考にしてください。数値の確認には温湿度計が欠かせません。
保温を強めたら「結露・換気」もセットで見直す
冬は熱を逃がさないように、ケージのフタを閉め気味にしたり、側面を断熱材で覆ったりする工夫が増えます。節電にも有効な方法ですが、ひとつだけ裏側の注意点があります。ケージ内と室内の温度差が大きくなるぶん、ガラス面やフタの裏に結露がつきやすくなり、空気の入れ替わりも減ることです。
湿度を保つことと、空気がよどむことは別の話です。結露や湿気がこもったままになると、床材の隅やシェルターの裏などでカビが発生しやすくなるとされています。保温を強めた冬ほど、次の点もあわせて確認してみてください。
- 断熱材やカバーで囲うときも、通気口や金網の部分を完全にふさがない
- 餌やりや霧吹きのついでに1日1回はフタを開けて、空気を入れ替える
- ガラス面やフタの裏の結露は、見つけたら拭き取る
- 床材が常にべちゃっと濡れているなら湿らせすぎのサイン。表面が乾いてきたら湿らせる、くらいの周期に調整する
それでもカビやにおいが気になってきたときの対処は、コバエ・カビ・におい対策の記事で発生源ごとにまとめています。結露の拭き取り方や換気のタイミングなど、保温と空気の入れ替えを両立する具体的なコツは冬のケージ結露・換気対策の記事に詳しくまとめています。ガラス温室を使っている場合は結露と換気の影響がさらに大きくなるため、温室の記事の換気の項目もあわせて確認しておくと安心です。
電気の安全と電気代
保温器具がフル稼働する冬は、電気まわりの安全確認も習慣にしたい季節です。
- 低温やけど対策:パネルヒーターの上に長時間居座る配置になっていないか、器具とカメの距離は適切かを確認します(やけど防止の記事)
- 配線・タコ足の点検:ほこりの積もったコンセントや無理なタコ足配線は発熱の原因になります。電気の安全対策の記事のチェックポイントを月1回程度見直すと安心です
- 器具の故障に備える:保温器具は消耗品で、真冬に突然止まることもあります。ヒーター故障時の応急対応を読んでおくと、いざというとき慌てずにすみます
- 停電への備え:冬の停電は保温器具がまとめて止まるのが怖いところです。使い捨てカイロや毛布・断熱材など、家にある物でどう一時しのぎするかをあらかじめイメージしておくと落ち着いて動けます。備えの全体像は停電・災害対策の記事にまとめています
- 電気代が気になる場合:ケージの断熱を強化して「熱を逃がさない」工夫をすると、温度を下げずに消費電力を抑えられます。具体策は冬の電気代と節電の記事へ。複数飼育なら温室化も選択肢です
冬の毎日・毎週チェックリスト
毎日
- 朝: ケージ全体とバスキングスポットの温度、湿度の確認(最低温度の記録もチェック)
- 水入れの水換えと、床材・水苔の湿り具合の確認
- 食欲・動き・目や鼻の様子をひと目観察
水換えでひとつ気をつけたいのが、冬の水道水の冷たさです。汲みたてをそのまま注ぐと、水浴びに入った体を急に冷やしてしまうことがあるため、室内にしばらく置いて常温に近づけてから使うと安心です。カルキの扱いも含めた水の用意の仕方は水道水の使い方の記事にまとめています。
週1回〜月1回
- 体重測定と記録(週1回程度)
- 保温器具・サーモスタットの動作確認、配線とコンセントまわりの点検(月1回程度)
- 紫外線ライトの使用期間の確認
1年を通した管理の流れは年間管理カレンダーにまとめているので、季節の切り替えどきの見通しに活用してください。
また、年末年始の帰省や旅行で家を数日空ける予定があるなら、サーモスタットとタイマーによる自動化を前提にした留守番・帰省時の管理の記事も早めに確認しておくと、冬の外出の備えがしやすくなります。
まとめ
加温越冬の管理は、「温度と照明を秋までと変えない」「乾燥対策を足す」「電気の安全を定期点検する」の3本柱に集約されます。冬は手間のかかる季節に見えますが、サーモスタットとタイマーに任せられる部分を任せてしまえば、日々のお世話は温度計の確認と水換え、観察が中心です。
暖かいケージの中でもりもり食べて日光浴(ライト浴)をする姿は、冬ならではの安心感があります。器具に頼るぶん「止まっていないか」のチェックだけは欠かさず、春まで安定した環境を保ってあげてください。
よくある質問
冬でもライトは夏と同じ時間つけるべきですか?
加温して冬を越させる場合は、冬も1日12〜14時間程度の点灯を保つのが基本とされています。日照時間が短くなると冬支度のスイッチが入り、食欲が落ちる一因になると考えられているためです。タイマーで点灯・消灯を一定にするのがおすすめです。
加温しているのに冬になると食欲が落ちます。大丈夫でしょうか?
温度・照明が保てていても、季節のリズムで食欲が多少落ちる個体はいます。体重が維持できていて元気があれば様子見でよいことが多いですが、まず温度計で最低温度を確認し、まったく食べない・痩せてくる場合は病気の可能性も考えて早めに爬虫類を診てもらえる病院に相談してください。
マレーハコガメも冬眠できますか?
できません。マレーハコガメは熱帯原産のため冬眠には対応しておらず、日本の冬は水場ごと通年加温するのが必須です。モエギハコガメやヒラセガメなどアジア系の種類も、加温して冬を越すのが基本と考えてください。
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